*Delusion sentence*
山の中にひっそりと佇む温泉宿。
客室数も少なく、逢瀬に選ぶにはもってこいの隠れ家のような宿だった。
そこに千里はいる。
家族には学生時代の女友達との旅行だと偽り、男と不倫旅行に来ている。
子供を持ち家族が増えたことにより、女から妻、妻から母となっていくにつれ自分の中の女を忘れていってしまった。
夫も同じなのだろう、いつからか千里を誘ってこなくなった。
浮気…
自分がそんなことができる女だとは思っていなかった。
してみたいという欲望は勿論あったが、本当に自分ができるとは思ってもみなかった。
ましてや不倫旅行など…。
でも、千里は思った。
自分の人生をこのままで終わらせたくない。
もう一度、いや…もっともっと自分の人生を謳歌したい、堪能したいと思ったから勇気を出して前に踏み出した。
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